みんなの粉体塗装GUIDE » 【お悩み解決】粉体塗装の基礎知識解説 » 粉体層で乗る厚み

粉体層で乗る厚み

イメージ

粉体塗装とは、顔料などを粉砕して直接金属に噴き付け、コーティングする塗装方法です。粉体塗装の膜厚は厚くて丈夫なので、ガードレールなど厳しい環境に耐えられるものに活用されています。このページでは粉体塗装の膜厚の特徴について紹介しています。

粉体塗装とは

粉体塗装とは、以下のものを粉砕してパウダー状にした塗料を直接金属などに噴き付け、コーティングすることです。

  • 顔料
  • 硬化剤
  • 添加剤
  • 樹脂
  • フィラーなど

溶剤塗装は顔料をシンナーなどの溶剤に溶かして塗布します。それに対し、粉体塗装は静電気を利用して塗料を付着させ、乾燥炉で加熱することで塗膜を形成し、塗装を行います。

耐久性、防錆性が高いため再塗装の回数が激減するだけでなく、付着しなかった塗料を回収して再利用できることから、ランニングコストを削減することが可能です。ロスが少なく、塗装ライン小型化、自動化が容易なので、塗装業者は安価な料金を実現することが可能になります。

また、溶剤塗装に使用される有機溶剤には、シックハウス症候群の原因としても知られているVOC(トルエン、キシレン、酢酸エチルといった揮発性有機化合物)が含まれていますが、粉体塗装は無溶剤塗料なのでVOC排出量がゼロ、もしくはほとんど含みません。

VOCが原因の中毒や引火、公害といったリスク発生を抑制できるので、火災リスクを軽減し、人間にも環境にもやさしい塗装方法として建設業界や装飾業界などで注目を集めています。

粉体塗装の膜厚の特徴

粉体塗装の膜厚の特徴について紹介します。

塗装方法によって膜厚が異なる

粉体塗装には2通りあります。

  • 静電気を利用し付着させる方法(静電吹き付け法)
  • あらかじめ被塗物を予熱し、粉体塗料を溶着させる方法(流動浸漬法)

静電吹き付け法は塗装膜を調整しやすく、一度の噴き付けで40〜100μの膜厚が可能です。流動浸漬法は一度の噴き付けで200〜1000μの厚膜を得ることができます。

1回の塗装で40〜150㎛程度の膜厚が可能

一般的な溶剤塗装の場合、一回の塗装で可能な膜厚は10~20㎛程度ですが、粉体塗装の場合40〜150㎛程度の膜厚が可能です。これは溶剤塗装のおよそ4~5倍であり、エッジ部への付着性も優れているので、タレ、タマリ、ピンホールも少なく、均一に強く丈夫な高厚膜塗装ができます。また、厚い塗膜なので金属と空気の接触がシャットアウトされ、一般的な溶剤塗装とくらべて防錆能力にも優れています。

焼付によって非常に丈夫で強い膜になる

粉体塗装後の塗膜は焼付時の化学反応による融解によって強固に結びつき、非常に丈夫で傷に強く、耐熱性や耐油性にも優れているため、厳しい過酷な環境や使用用途でも耐えることができます。そのため、自動車部品、ガードレール、スチール家具、エクステリア用品などの製品に多く利用されています。

使用する塗料によって柔軟性のある塗膜になる

粉体塗装には以下のような性質の異なる塗料があり、使用する塗料によって仕上がり時に柔軟性のある塗膜の形成が可能になります。

  • エポキシ系
  • エポキシポリエステル系
  • ポリエステル系
  • ナイロン系など

柔軟性のある塗膜は、塗装の割れや剥離のしにくさに優れており、屋外など温度差の激しい環境でも金属の伸縮に耐えることができます。そのため、ひび割れや剥離がしにくく、寿命が長いといえます。耐摩耗性や耐衝撃性が求められる場面で大活躍できるでしょう。