粉体塗装は再利用できるなど、非常に便利といえる塗料です。しかし、塗装機器管理などを間違えると不良につながってしまいます。このページでは粉体塗装で生じる代表的な不良例を紹介します。
粉体塗装において塗料が均一に分散せず、塗膜表面にブツ状の小さな塊が凸状に発生する現象のことをスピットといいます。塗装ガン先端に塗料が付着し、堆積したものが塊となって塗面に付着したり、粉体塗料が貯蔵中、もしくは塗装時の回路中においてブロッキングしたりすると発生します。
粉体静電塗装時に粉体層の膜厚が過剰に厚くなると被塗物と反対極の電荷が誘起され、帯電した塗着粒子が互いに反発します。この時クレーターのようなへこみが発生し、表面凹凸が大きくなる現象を静電反発(逆電離現象)といいます。印加電圧が高く、フリーイオンの多い塗装ガンを使用していると発生します。
保管場所の温度と湿度が高くなることで、粉体塗料の粉同士が付着し合ってブロック状に固まる現象をブロッキングといいます。粉体塗料を長期間保管して古くなっていると発生します。
他色の塗料が混入して塗膜に斑点状の色むら、はじきが発生する現象を「コンタミ」といいます。
太陽光、紫外線、熱など外的要因などにより塗膜の色が黄色に変色する現象を「黄変」といいます。ガス式乾燥炉の燃焼生成ガスの影響か焼付温度が高いもしくは、焼付時間が長いなどにより発生します。
粉体塗料が被塗物の端に多く付着し、端部分のレベリングが悪くなる現象を「額縁現象」といいます。印加電圧が高い被塗物とガン距離が近い、粉体塗料の吐出量が多いなどにより発生します。
乾燥、焼付不足により塗膜硬度が規定以上に硬化していない状態を「硬度不足」といいます。焼付温度が低いもしくは、焼付時間が短く、前処理剤と粉体塗料の相性が悪いと発生します。
静電反発(逆電離現象)もしくは塗装条件などにより塗膜表面が大小の波をうったような、塗膜のレベリングが悪い状態を「ゆず肌」といいます。印加電圧が高く、塗装時の膜厚不足もしくは、過剰膜厚により発生します。
塗膜上に錆が発生している状態を「発錆」といいます。水切り乾燥が不十分で、表面に水分が残っている、汚れた作業着・手袋や素手で被塗物を触った、膜厚が薄いなどが原因で発生します。
塗装時もしくは焼付時に塗料が全体に端によってしまい、塗料が下方に流れて塗膜が不均一な状態を「流れ・たれ」といいます。塗装時の過剰膜厚(厚塗り)によって発生します。
塗膜表面にクレーター状のへこみや、その中心部をピンで刺したような穴が発生している状態を「ピンホール」といいます。被塗物の表面処理不足や錆・ゴミの付着、焼付乾燥炉の温度が高いと発生します。
異物、油などにより塗料と被塗物との間の表面張力が不均一になることで塗膜表面にへこみが生じたり、下地まで貫通する穴が生じたりする現象を「へこみ・はじき」といいます。塗装機、コンプレッサーなど塗装設備に水、油等が混入していると発生します。
塗料と素材(鉄、ステンレス、アルミ、メッキ鋼板など)が浮き上がる、剥離するなど密着していない状態を「密着不良」といいます。素地剥離と塗膜間剥離があります。素材の化成処理不足もしくは素材と塗料の相性が悪いと発生します。
塗膜の乾燥工程に何らかの原因で混入した異物が、塗膜表面に付着し突起状になっている状態を「ゴミブツ」といいます。回収粉を使用している場合、金属粉やゴミなどが回収タンクに混入、または古くなった粉体塗料のブロッキングやゲル化による硬化不良が発生し、十分に溶けきらなかった塗料が塊になると発生します。