粉体塗装では様々な塗料が用いられますが、含有樹脂の熱に対する反応性から、熱硬化性粉体塗料と熱可塑性粉体塗料の2種類に分けることができます。このページでは粉体塗装の塗料の種類と代表的な樹脂系ごとの塗装条件や特徴、具体的な用途について解説します。
熱硬化性粉体塗料とは、加熱によって架橋反応を誘起することで、硬化する塗料のことです。
架橋反応とは、鎖状になった分子の間に橋を架けるように多種類の分子が繋がる反応のことです。繋がることで高分子では一般に粘着が増し、ゲル化したり固くなったり、溶剤などにも溶けにくくなります。
熱硬化性粉体塗料は一度硬化すると再加熱しても硬いままで、軟化・流動しません。含有する樹脂の系統によって特徴や塗装条件が異なるので、用途に応じた塗料を選ぶことができます。熱硬化性粉体塗料は主に静電粉体塗装法で用いられている塗料であり、代表的な樹脂系ごとの塗装条件や特徴、用途は以下のとおりです。
樹脂系 | エポキシ系 | エポキシポリエステル系 | ポリエステル系 | アクリル系 | フッ素系 |
---|---|---|---|---|---|
焼付温度 | 130~200℃ | 150~200℃ | 140~230℃ | 150~200℃ | 160~360℃ |
特徴 | ・高耐食性 ・高耐薬品性 ・高密着性 ・高耐水性 ・高硬度 ・絶縁性 ・低耐候性 |
・高耐食性 ・高作業性 ・高加工性 ・高経済性 ・低耐候性 |
・高耐候性 ・高耐水性 ・高作業性 ・高加工性 ・高経済性 |
・高耐候性 ・高耐汚染性 ・高鮮映性 ・低温硬化性 |
・高耐候性 ・高耐光性 ・高耐薬品性 ・高耐摩耗性 ・高耐熱性 |
用途 | ・家電 ・自動車部品 ・上下水道管 ・電気部品 ・重電機器 ・船舶 |
・鋼製家具 ・家電 ・自動車部品 ・建築資材 ・事務機器 ・家庭用品 ・電気部品 |
・家電 ・自動車部品 ・道路資材 ・建築資材 ・鋼製家具 ・重電機器 ・建設機械 ・農機具 ・家庭用品 |
・家電 ・自動車部品 ・道路資材 ・建築資材 |
・高層建築外装 ・工業用部品 ・家電 ・厨房器具 |
熱可塑性粉体塗料とは、加熱によって軟化・溶融して変形し、冷却によって固化する塗料のことです。化学変化を伴わないため、再度加熱して冷却すると再び軟化・溶融して固化します。
熱可塑性粉体塗料は主に流動浸漬塗装法で用いられている塗料であり、代表的な樹脂系ごとの塗装条件や特徴、用途は以下のとおりです。
樹脂系 | 塩化ビニル系 | ポリエチレン系 | ナイロン系 |
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予熱温度 | 230~290℃ | 260~320℃ | 340~430℃ |
後加熱温度 | 200~320℃ | 200~320℃ | 340~370℃ |
特徴 | ・高耐候性 ・高耐薬品性 ・高耐食性 ・高耐水性 ・被覆性 ・厚膜美装性 |
・高耐食性 ・高耐候性 ・高耐水性 ・高耐久性 ・高耐摩耗性 ・被覆性 |
・高耐油性 ・高密着性 ・耐摩耗性 ・高耐衝撃性 ・耐熱性 ・絶縁性 ・被覆性 |
用途 | ・道路資材 ・建築資材 |
・家電 ・上水道管 ・建築資材 ・道路資材 ・重電機器 ・家庭用品 |
・家電部品 ・自動車部品 ・配管 ・機械部品 ・鉄道部材 ・家庭用品 ・医療機器 ・飲料水容器 |
粉体塗装は金属素材の製品を中心に様々な分野で使用されており、金属家具や電気機器、建設、産業機械、機器・器具の割合が大きくなっています。具体的な使用例は以下のとおりです。
使用分野 | 使用例 |
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金属家具 | 机、椅子、陳列棚、書架、ロッカー、業務用ワゴン、ベッドなど |
電気機器 | 分電盤、配電盤、ラジエーター、柱上トランス、電力計、発電機、モーター、ガス給湯器など |
建設・産業機械 | パワーショベル、フォークリフト、FA機器、工作機械、包装機、ボンベ、農業機械など |
機械・器具 | 医療用品、現像機、精密機器、IT機器、事務機など |
家電製品 | レンジ、レンジフード、エアコン、冷蔵庫、洗濯機、暖房機、ミシン、照明器具、電話機など |
道路資材 | ガードレール、ガードパイプ、橋梁手摺り、欄干、標識用ポール、信号機、照明柱など |
水道資材 | 鋼管、鋳鉄管、異形管、ニップル、仕切弁、継ぎ手、水栓金具、メーターなど |
建築資材 | フェンス、門扉、手摺り、面格子、住宅鉄骨、シャッター、カーテン、ウォール、パーテーション、雨樋金具、鉄筋バーなど |
自動車部品 | ボディー、ワイパー、バンパー、スプリング、ホイール、ブレーキドラム、ブレーキパッド、オイルフィルター、エンジンブロック、ルーフレール、ドライブシャフト、トラック荷台部分など |
その他 | 農業資材、家庭用品、消火器、ガーデニング用品など |